ウィンストン・マコールが暮らすバイロン・ベイの自宅キッチンに置かれた冷蔵庫には、側面にトム・ウェイツの次の言葉が飾られている:「美しい旋律で恐ろしいことを語ってほしい」
彼、パークウェイ・ドライヴのヴォーカリストは、この言葉が自分自身をよく言い表しているという。これはオーストラリアのニューサウスウェールズ州北東部の、絵のように美しく穏やかな一角で生まれた7枚目のフルアルバム『Darker Still』の基本理念としても当てはまり、また、モダンメタル界で最も崇められる彼らにとっては、音楽を定義するステートメントともいえる。
マコールが言うには、『Darker Still』は彼と彼のバンドメイトたちーーギタリストのジェフ・リングとルーク・キルパトリック、ベーシストのジア・オコナー、そしてドラマーのベン・ゴードンーーが、2003年にそれぞれの家の地下室や裏庭に集うようになってから、ずっと思い描いていたヴィジョンだ。今この瞬間にたどり着いたパークウェイの旅路は、メタルの弱小バンドからフェスでヘッドライナーを務める大物へと進化した道のりである。20年近い過酷な年月の間、彼らは批評的にも商業的にも成功した6枚のスタジオアルバム(自国でどれもゴールドを達成)と、3本のドキュメンタリー、1枚のライヴアルバムをリリースし、数え切れないほどのショーを行ってきた。
「パークウェイの活動を始めたときは、皆、自分たちにできる以上のことに挑戦しようと頑張っていた」とマコールは言う。「だからうまくいけば行くほど快適になり、すっかり満足してしまうほどだった。そのとき、ただ満足しているだけなら、長年かけて育んできたスキルやクリエイティビティを正当化できなくなるって思ったんだ。Darker Stillから聞こえてくる音は、自分たちの頭の中にいつもあったイマジネーションに追いつこうと、学び、成長するおれたちの能力の最終形だ。いつも心の中にあったのは、こういうサウンドなんだ。常にこうやって夢を見ていた」
その成長を認識することは、音楽的にもテーマ的にも『Darker Still』を理解することにつながる。比類なきエネルギー、エンジン全開のブレイクダウン、マコールのトレードマークの咆哮、それだけでパークウェイ・ドライヴをわかった気になっていた者たちは、このオーストラリアのヘヴィ・ミュージックの大家についての知識を、すべて再考する必要がある。ここ最近の彼らの進化に注目している人なら、とりわけ驚くことではないだろうが。「これは『Ire』で始まった旅であり、今も『Reverence』でさらに先へと続いている」とマコールは、バンドの2015年と2018年の作品をあげて説明する。その観点で、ジャンルという制限のある安全な在来技法を避け、自らに課したルールを放棄し、大胆で新しい地平線に目を向けて、創造性と成功の新たな高みに到達した『Darker Still』を、変革の3部作を締めくくる作品とするのは容易い。「今まで試そうとしなかった、あるいはもっと正確に言うと、ちょっと手を出したことはあるけれど、うまくやり通せる勇気も時間も理解もなかった、といえる曲や歌がある」とマコールは明かす。
ヴォーカリストがまず口にするのは、成長するためには過去を手放さなくてはならないということだ。『Darker Still』の青写真を描く前に、パークウェイはこの主張に、かつてないほど強く包み込まれた。マコールはこう説明する。「現時点で聴こえてくるレコードとは一線を画すものを作りたいと思った」
それは「より広がりのあるサウンドで、音楽に新たな重みを加えることができるもの」だという。ゴードンは、一方で、「今までで一番ヘヴィな部分もあるが、それは種類の異なるヘヴィさ、つまり、身体中のあらゆる細胞で感じる感情のカタルシスだ」とも口にする。ドラマーは残酷なまでに正直に「常に変化するCOVIDのロックダウンや、政府の命令、旅行の制限、そしてバンド内の緊迫した人間関係」に囲まれながらの『Darker Still』は、バンドのキャリアにおいて最も挑戦的な時間だったと振り返る。ジェフ・リングは同意し、3年に渡った曲作りとレコーディングの日々――はるか昔の2019年4月に始まり、プロデューサーでエンジニアのジョージ&ディーン・ハジクリストとスタジオで過ごした3ヶ月を経て、2022年2月に終わったーーで、「最後には自分が壊れてしまった」と認め、ロックダウン中の家庭生活と、階下のホームスタジオで「みんなのアイデアをまとめようとする困難な仕事」をなんとか調整していたと言った。
「曲作りをするとき、おれたちは自らに疑問をいくつか投げかけて、創作の道筋をはっきりさせる」過酷なプロセスについて彼はそう説明する。「“この曲は何を成し遂げるのか?” “なぜこのアルバムにふさわしいのか?” “リスナーをどんな気持ちにさせるのか?” そういった論点を考えれば、自分たちが正しい道を辿っているかどうかわかる」
「曲作りにおいては、おれたちはかなりコラボレーティヴなバンドだといえる」とゴードン。「どの曲も、最終ヴァージョンとなるまで何度も細かく精査し、微調整する。最初に演奏したときとレコードに収録したときで、完全に変わってしまう曲もある」
だから『Darker Still』は、疑うべくもなくパークウェイ・ドライヴらしい作品である一方で、同世代のメタルコアだけでなく、メタリカ、パンテラ、マシン・ヘッド、ガンズン・ローゼズといったロックやメタルの重鎮たちと肩を並べられるサウンドを実現しているのだ。「このレコードにはクラシック・ギターの音がほしかったんだ」とリングは説明する。 彼は、ライヴで自分のリフが観客に繋がることがインスピレーションの源だという。「おれはいつも90年代のメタルに魅力を感じていた。だからこういった路線に沿ったまま現代的なエッジを効かせたものが、おれにとってのジャイヴだった。クリエイティヴ面ではおれの目標は、複雑で好奇心をそそる音楽でありながら、誰もが理解して楽しめるシンプルな曲を書くことだった。おれたちはレイヤーやサウンドスケープをやりすぎないよう、意識的に決断をくだしていた。こういった戦略が、おれたちの飾り気のないクラシックなアルバムのヴィジョンを強化することに役立つんだ」
「制作面では、90年代に少し遡って、よりリアルでナチュラルな音を取り入れ、レコードにもっと個性を与えたいと思っていた」とゴードンはうなずく。『Darker Still』のセットの裏にある彼の作業――「どれだけ見せびらかすことができるかではなく、曲を一番引き立てられるものは何か」という彼のシンプルな判断――が、レコード全体を象徴している。「ダイナミクスの重要性を身につけるまで、長い時間がかかった」と彼は言う。「今は前よりも自分たちらしさを引き出し、必要に応じて曲に取り入れることができるようになった」
これは新たに命を吹き込まれたサウンドで、マコールの最も私的で内省的な楽曲に、背景を提供している。そこで探究しているのは、‘霊魂を覆う闇’というコンセプトだ。「人生のある時点で、己の信念の構造、自己意識、世界の中の自分の居場所に直面させられ、一人の人間としての生き方と相容れない地点まで到達するという考えかた」とマコールは説明する。ピンク・フロイドに端を発し、最も比較しやすいナイン・インチ・ネイルズの『Downward Spiral』まで続くロックの偉大なコンセプト・アルバムのように、『Darker Still』は展開する。
社会による死の恐怖、社会的孤立、人間性の喪失についての反芻の中で、収録された11曲は、古典的な3幕構成で繰り広げられる。そのセットアップの幕開けは「Ground Zero」だ。「己の内なる独白と考える」とマコールは言い、不気味に「戦い、転落、傷跡、砕けた骨」と歌い、「そのすべての下に、亀裂が現れる…」と続ける。その第2幕では、‘対決’が、アルバムのタイトルトラックの核になっており、「愛と時間」をテーマにした7分近くのクラシック・ロック・エピックで、メタリカの「Nothing Else Matters」を想起させている。一方で、アルバムの‘決意’は、「From The Heart Of Darkness」で結論づけられている。この陰気なモンスターは、マコールの瞑想的探究(“内部で戦闘が起こっている、安全な者は誰もいない/たとえ逃げても、隠れることはできない/そのとき立ち向かうべきなのは己の魂”)で始まり、その後“怒りよ、我が勝利となれ!”というモッシュコールで爆発する。
「レコードの終わりの方で、おれにとってこの旅がどんなものだったか、ある程度自分の体験を映し出してみたいと思った」マコールはそう明かす。「自分に正直になるために反逆の意を示すことを、おれはいつも恐れていたんだって気づいたよ。たとえそれが、より良い自分になるために本来の自分を犠牲にすることだったとしてもだ。それは、己の一番ダークな部分から、引きずり出さなきゃならないものだろう。なぜなら、そのダークな場所をおれはいつも恐れているから。そんなところに光を当てたくはない。人に見せるのもいやだし、避けたいし、具体化するのも恐ろしい要素だ」
これこそ『Darker Still』を定義する締めくくりの言葉だ。これが、バンドが20年間目指してきたパークウェイ・ドライヴである。リングは言う。「みんなで一緒に達成できたことを本当に誇りに思っているし、ミュージシャンとして、立ち位置も能力も新たな領域に達することができたと感じる」ここ数年の闇から姿を現しつつあるパークウェイの真の姿は、再定義され、毅然とした態度で、己の心に集中し、反骨精神を失ってはいない。