Alfa Mist

Alfa Mist (アルファ・ミスト)

2015年のデビューEP『Nocturne』以来、Alfa Mistはジャズ、ヒップホップ、クラシック音楽を自在に行き来し、独自の音の世界を築いてきた。Loyle Carner、Tom Misch、Richard Spaven、London Contemporary Orchestra、Ólafur Arnaldsといった多様なアーティストとのコラボレーション、そして5枚にわたる高く評価されたアルバムを通じて、彼はジャンルの境界を取り払い、広大なビジョンを提示してきた。しかし、自身のレーベルSekitoからリリースされる6作目のスタジオ・アルバムにおいて、この多作なプロデューサー/ソングライター/ピアニスト/MCは、さらに一歩先を行く創作に挑んでいる。彼は、自らのサイエンス・フィクションの世界を創造したのだ。ようこそ、『Roulette』へ──転生が現実となる広大なディストピアの世界で、復讐、赦し、救済といったテーマが大きく立ち現れている。

 

『Roulette』は、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのヘッドライナー公演を控えるアーティストにふさわしい、大胆なスケールを持った作品だ。これまでも彼のアルバムは、(2023年の『Variables』で描かれた)自身の来歴や、(2021年の『Bring Backs』で綴られた)ウガンダ移民としての母親の体験といった大きなテーマを扱ってきたが、今回は新たな表現形式に踏み込んでいる。『Roulette』は短編小説の連作であり、アニメや仏教思想、そしてテッド・チャンの小説『不安は自由のめまい』のような「もしも」の世界に着想を得た映画的スケールの作品群であるという。まさに「ブラック・ミラー」的アルバムとも、「エターナル・サンシャイン」の逆バージョンとも言えよう。

 

Alfa Mistが描く近未来において、転生は夢と過去の人生を結びつける強力な手段として発見される。しかし、その発見には倫理的・道徳的・哲学的な帰結が伴うこととなる。「もし転生が現実だとしたら、それは社会をどう変えるのか?」と彼は語る。「転生が知識の蓄積を意味するのなら、それを共有して皆がより深く世界を理解できるようにするのか?それとも力を求めて争うのか?あるいは、他人が自分の過去を思い出すのを阻止しようとする人が現れるのか?」

 

15曲を通じて、Alfaはこれらの問いを力強く掘り下げている。各曲はルーレットの一回転のように異なる物語とキャラクターを描き出しており、彼特有の煌めく鍵盤、直感的なグルーヴ、自由に流れるジャズ・インプロヴィゼーションは健在であるが、全体にはスモーキーなサイケデリアの要素が漂う。あたかも現実と記憶の断片の間に存在しているかのような音像である。制作にはこれまで同様、ビートテープを基に即興演奏する親しい仲間たち──Kaya Thomas-Dyke、Samuel Rapley、Johnny Woodham、Jamie Leeming、Jamie Houghtonらが参加し、多くはSekito
Recordsからソロ作品もリリースしている。さらに今回は、ゲスト陣も多彩である。クイーンズ出身のラッパーHomeboy Sandmanは、軽快なブーンバップ調のオープニング曲「Reincarnation」に参加し、英国のシンガーTawiahは控えめなオルタナティヴ・ソウル「All Time」で「一生を超える愛」というテーマを歌い上げている。Homeboy Sandmanは映画『Groundhog Day』にインスパイアされており、「彼は各ヴァースで転生し、そのたびに新たな知識と平穏を得ていく」とAlfaは説明する。「彼は僕のお気に入りのラッパーのひとりで、非常に詩的で、言葉で絵を描くような表現をする。」

 

本作は、これまでよりもヴォーカルを前面に押し出しており、Alfa自身も内省的な「9 Months」や、グランジ調のギターが主導する「Give Nothing」でラップを披露している。なかでも「Always Be」は、Kaya Thomas-Dykeがリード・ヴォーカルを務める切なく夜想的なジャズ・ソウル・バラードで、「もしもう一度生まれ変われるなら──すべてを忘れてしまうのか?」という問いを投げかける。『Roulette』は「全感覚で“感じる”ために作られた」とAlfaは語っており、彼のキャリアにおける最も精巧なアレンジも収録されている。たとえば、8分間にわたり拍子が変化するタイトル曲「Roulette」は、「人生もそう、いつも直線的じゃない」と彼が述べる通りであり、「Found You」のタイムワープ的なギターソロも秀逸である。また、GrimeやDrum’n’BassといったUKエレクトロニック・サウンドも吸収され、影のあるブレイクビートやスタッカートのストリングスとして、「Give Anything」などに表出している。そのストリングスは、Peggy Nolanが演奏するチェロをポストプロダクションで重ねることで、弦楽四重奏とは異なる「より濃く暗い音色」を実現している。

 

ジャケットには、楽曲「Dersen Cafe」に基づくアニメ風のスケッチが描かれており、フランス人アーティストMathias Lemaitre Sgardによるイラストで、主人公Yaraと彼女の敵対者Recceのカフェでの一幕が切り取られている。Yaraが誤ってRecceの足を踏んでしまい、Recceが彼女のケーキを踏みつけたことから、暴力に発展する場面である。「これは過剰な報復についての話だ」とAlfaは語る。「ジョン・ウィックが犬を殺されたことで1000人を殺すような話に似ている。現実にもそうした過剰な報復が頻繁にあり、しかも大義があるとされている。」

 

また、アーティストのJames Reuben Stevensは、レコードのスリーヴに封入されるコミックにも協力しており、それは復讐/探偵ドラマのひねりを加えたストーリーとなっている。Alfaは「殺人犯が無害な存在に生まれ変わったとき、報復はどうあるべきか?」という問いを提示している。「僕はアルバムで常に問いを投げかけているけれど、必ずしも答えを示すわけじゃない。ただ、会話を広げたいんだ。」

 

そして彼は、外の世界を描くだけでなく、自身の内面も探求し続けている。たとえば「Who Were You」は、自己受容の歌であるとAlfaは語る。「過去の自分に対する感謝の気持ちや、成長を実感しつつも、その時点で得られた情報で最善を尽くしていたという認識についての曲である。」さらに彼は続ける。「ある意味で、人は常に転生し続けているとも言える。人生を時代ごとに分けて、自分自身の異なる姿を見て、それを過去の人生とみなすこともできる。では、人は常に進化し適応しているのか?それとも最も良かった時代に戻りたがっているのか?過去の自分と今の自分、そのせめぎ合いを、このアルバムとストーリーを通じて探っている。」

 

『Roulette』は、Alfa Mistを英国音楽界における最も先進的な作曲家のひとりとして位置づける作品であり、胸を打つ哀愁のメロディーが聴く者の心に深く残る。転生というテーマを扱ってはいるが、彼自身は作品ごとに完全な再発明を行っているとは捉えていない。むしろ、それは洗練のプロセスであると語る。「自分の中のさまざまな側面を探求しているだけなんだ。でも、成長するにつれて、それらすべての部分が変化していく。音楽は一定の存在であり、自分の精神状態を常に磨き続け、興味を持ち続けるようにしている。それができていれば、自然と音楽にも表れる。」

 

Video